[ 2004.05.01 ]
ある夏の夜、平川先生から「桑鳩先生が福岡へ来られているのでお前も出てこんか、俺は少し遅くなるからお前は先に行っとけ」とのお言葉を頂いた。桑鳩先 生のご高名は平川先生の師として常々伺ってはいるもののお会いした事がない、どんな先生だろうと福岡の書家仲間のお宅を訪問。玄関先から大きな笑い声が聞 こえてきた。中へ通されると九州各地から書の先生方が数名集まっておられたがどの人が桑鳩先生か分からない、一番割腹の良い偉そうな先生の前に行き挨拶す ると「桑鳩先生はこちらの先生だよ」と隣に座っておられた先生を紹介され恥ずかしい思いをした事を思い出す。22、3の頃だった。

その後奎星展 で上京の折、平川先生のお供で世田谷の桑鳩先生のご自宅へご一緒させて頂いた。まず驚いたのは玄関を入ると石、アトリエに通されると部屋の中にも、そして 庭中石がごろごろ転がっていた。「その辺の石を退けて座りなさい」と桑鳩先生。いろいろお話の最中も可愛い子の頭を撫でるように、丸い石を抱えてお話にな る楽しそうな笑顔の優しい桑鳩先生の目が印象的で石をテーマにした数多くの作品の根源を懐かしく思い出している。
(月刊「書の美」2004年5月号『徒然なるままに』より)