[ 2004.01.01 ]
お正月と言えば1月2日の書初めを思い出す。私の子供の頃は2日起こしと言って、1月2日は決まって朝早く起こされ、眠い目をこすりながら寒い中外に出て、里芋の葉っぱに溜まった露をお茶碗に入れ持ち帰り、硯に移し墨を磨る。当時我家の硯や墨は粗悪で、勿論墨汁やねり墨は無く墨を濃くするのに苦労した。墨を磨ると我々兄弟1人1人自分自身の新年の目標「1年の計」を書初めとして揮毫するのである。これ等の習慣は、日々の生活の延長とは言え新たな年への決意と自覚、自立心を持たせる意味があり、子供心に「やる気」を促す親の願いがあったように思う。ただ早起きの苦手な私には苦痛の日であった。

私に書く事の楽しさ、喜びを教えて下さったのは先師、故平川朴山先生であった。高校時代の書道講師としてご教授頂いたが、卒業後書から遠ざかっていた私に「暇があったら遊びに出て来ないか」と声を掛けて頂いた。正月休みに初めて先生のお宅へ新年の挨拶に伺い、書の再開に向けた決心が付いた。卒業後4年が経過していたが、これも新たな年への決意であり、現時点の自分を変えたいと言う欲望があった。

あれから40年が過ぎた。新年を迎え書の広さ、深さを実感し、平川先生の偉大さを再認識している。
(月刊「書の美」2004年1月号より)